研究
初期の清張作品は、けっこう時代物が多い。
そして、この作品も当然当時(1955年)でも時代物であるから、読む方としては特別の感情が入り
込むことはない。(「時代が違う」事を考慮しなくて良い。当然時代が違うのである。)
話の展開までもなく、時代物らしく状況説明がすべてである。
時代物で、以前の研究発表「怖妻の棺」 では、いきなり本題に入っていたので、
「時代物らしく状況説明」という定義は出来ないようだ。
書き出しからの推測では
長政と木谷の関係が話の中心になっていくのでは?
原題が「きず」で、改題が「疵」となっているが、困ったときの「広辞苑」で
きず【傷・疵・瑕】
@切ったり打ったりして皮膚や肉の損ずること。また、その箇所。けが。
A物のこわれ損じた所。われめ。さけめ
B不完全な所。非難すべき所。欠点
「きず」を「傷」や「瑕」でなく「疵」に改題した意味も何かありそうだ。
「国替え」とは
江戸幕府の大名統制策の一つ。
江戸時代を通じて、大名同士による国替(領地替)は幕府の命によりしばしば行われた。
国替は大名家のみならず、家臣とその家族の全てが移動する大変な作業であった。
個々の引越しはもちろんのこと、城内や城下の備品目録の作成、実際の請け渡し、幕府から
派遣された上使の接待など、周到な準備と多くの労力を必要とした。
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