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松本清張_怖妻の棺

No_421

題名 怖妻の棺
読み フサイノヒツギ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 松本清張全集 37 装飾評伝・短編3■【蔵書No0136】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通) 
初版&購入版.年月日 1973/2/20●初版
価格 1200
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日別冊」
作品表発表 年月日 1957年(昭和32年)10月号
コードNo 19571000-00000000
書き出し 非番なので遅く起きた戸村兵馬は、朝飯とも昼飯ともつかぬ食膳を終わって庭に下りた。秋のおだやかな陽が、うす紅くなった葉の上に溜まっている。塀際の隅に桐の実がこぼれていた。昨夜の酒で頭が少し重かった。兵馬が庭下駄を突っかけた時、人が訪ねてきたことを告げた。「誰だな?」「香月様からのお使いでございます」「弥右衛門の」兵馬は首を傾げた。滅多にないことでである。何だろう。玄関に出て見ると、見知りの香月の用人が待っていた。「まあ上れ、といいたいが急用だろう、何だな?」袴の上に両手を滑らせて挨拶する用人に、兵馬は懐手をして訊いた。「奥様からのお使いで参りました。昨夜、旦那様がこちらに伺うと申されて、未だにお帰りがありませぬ。もしや、御酒を過ごされて、こちらさまにご迷惑をおかけしているのではないか、伺って参れとのことでございます」そうか、といったが兵馬はしばらく返事をしなかった。
あらすじ感想 大失敗、「棺」を「館」と勘違いしていた。

訂正して再登録です。

時代劇、1時間半のドラマにでもなりそうである。
主人公は戸村兵馬。その友人の、恐妻家の弥右衛門。弥右衛門の妻おとわ、
弥右衛門の囲い女おみよ、植木職人仁兵衛。

恐妻家の弥右衛門が、外泊をする。友人である兵馬の家に、弥右衛門の内から使いが来る。
何かの予感からか、兵馬は、弥右衛門の外泊を酒のせいにして嘘をつき使者を帰らせる。
兵馬が結びつけたといってもいい、おみよが匿われている植木職人仁兵衛の家にゆくと弥右衛門が
死んでいる。取り乱すおみよ、と仁兵衛の妻。仁兵衛は留守である。
いかにも死に場所が悪い。正面切ってあの妻「おとわ」にいえることではない。
しかし、兵馬は弥右衛門宅の「おとわ」に話すことになる。亡骸の引き取りを断るおとわに、
跡目問題を出し、ようやく、引き取りを決断させる。
事態は一変する。弥右衛門の亡骸があるはずの、植木屋の離れに戻った兵馬は「あっ」と声を上げる
香月弥右衛門は蒲団の上に座っているのだ。
死んだはずの弥右衛門、本宅に死を伝えた兵馬、帰宅した仁兵衛が頭を抱える。
生き返った弥右衛門が悪い?「死のう」「こうなった上は仕方がない。死のう」と、弥右衛門が言う。
なぜか弥右衛門が切腹することに落ち着く。このあたりから、仁兵衛の策略が伺える。
弥右衛門の死後を頼まれた兵馬その手筈に奔る。
ある町に来たとき、裸馬に縛られた罪人を見る。

「ここにも何刻か後には死を確実に迎える人間がいる。」兵馬は足をとめて、その行列をじっと見送る。

納棺された弥右衛門は、棺の上から座って首を傾けている頭が見えるだけだった。
すべてが終わった後、兵馬の邸に植木の手入れに来た仁兵衛に兵馬はおみよの行方を聞く。
そして、「弥右衛門はどこにいる?」

「仁兵衛、弥右衛門とおみよはどこで暮らしている?」ときくが、

「何のお話ですかね」と受けつけない。

兵馬の推理が図星であろう。どんでんがえしの連続で都合良すぎる感はあるが、シリアスな問題は別
として、愉しめる作品である。

怖妻から逃れた「弥右衛門」が、何処かで幸せに暮らしているであろう余韻がすがすがしい。


2003年07月07日 記
作品分類 小説(短編・時代) 14P×1120=15680
検索キーワード 恐妻家・植木職人・本宅・家持ち女・両国・茶屋・棺桶
登場人物
戸村 兵馬 主人公。遊びなれた男。
香月 弥右衛門 戸村兵馬の友人。恐妻家
香月 おとわ 香月弥右衛門の妻。家持ち女。戸村兵馬も日頃から好意を持っていない
おみよ 香月弥右衛門の囲い女。親切で気だてがよい両国の茶屋女
仁兵衛. 植木職人。戸村兵馬の信頼も厚い

怖妻の棺




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