題名A | 願望 |
読み | ガンボウ |
原題/改題/副題/備考 | 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集37〕 |
本の題名 | 増上寺刃傷■【蔵書No0195】 |
出版社 | (株)講談社 |
本のサイズ | 文庫(講談社文庫) |
初版&購入版.年月日 | 2003/01/15●1987年1月に収録されたもをあらたに大活字、新装版として刊行 |
価格 | 619+税(5%) |
発表雑誌/発表場所 | 「別冊週刊朝日」 |
作品発表 年月日 | 1959年(昭和34年)2月号 |
コードNo | 19590200-00000000 |
書き出し | 延徳の初めというから、応仁の乱にひきつづいて、戦国乱世の兆しがみえる頃である。あるさむらいが、匹夫から身を起こして、数々の戦場で働き、十余年経ったころ、ようやく半カ国を領する身となった。こういう出世が出来るのも、切り取り勝手の時勢のお蔭である。今は家人数百人を召し抱え、領内から年貢を取り、広い屋敷に住み、駿馬数十頭を持って、結構な生活を送っていた。この士は、若いときから別して孝心が深かったが、両親は彼の富貴を待たないで世を去った。孝行を実行したい時に親は無しの譬えで、彼はたいそう残念に思った、こればかりは仕方がない。そこで、せめて両親の身代わりだと思って、ひとりの姉を大切にし、朝夕の心づかいを怠らず、姉の満足のためには、どのような奔走もいとわなかった。この姉というのは、若い時に夫に死別し、以来、永い間後家を通して来ている。その苦労のためか、五十をすぎた今も、痩せこけて皺多く、その白銀の筋のような白髪とともに、とんと六十くらいの老婆に見える。 |
作品分類 | 小説(短編・時代) |
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