松本清張_途上
題名A | 途上 |
読み | トジョウ |
原題/改題/副題/備考 | 【重復】〔(株)文藝春秋=松本清張全集36〕 |
本の題名 | 途上 松本清張初文庫化作品集B■【蔵書No0209】 |
出版社 | (株)双葉社 |
本のサイズ | 文庫(双葉文庫) |
初版&購入版.年月日 | 2006/02/20●初版 |
価格 | 548(522+26) |
発表雑誌/発表場所 | 「小説公園」 |
作品発表 年月日 | 1956年(昭和31年)9月号 |
コードNo | 19560900-00000000 |
書き出し | その時、私は駅の方を向いて歩いていた。駅前の暗い広場の向うに構内の明るい灯があった。私が駅に近づいて行ったのは、その灯を恋うたためかも知れない。実はその灯をみるまで。その晩、駅の待合室のベンチで寝るか、木賃宿にするか、心に決しかねていた。明るい待合室に入った時、急に気分が悪くなり、胸の内側にくるものがあった。思わず両手で口を押さえた途端、激しい咳と一緒に血が咽喉の奥から衝き出て、指の間から地面に溢れ落ちた。咳き入りながらそこに蹲ると、前に腰かけていた女の二、三人が悲鳴をあげて立ち上った。やはり今日一日、何里かの道を歩きつづけた故だ。私は今朝、この土地から、かなり遠い駅で下りた。東京を発って一昼夜以上要したのだが、其の駅からこの土地まで、殆ど食いも飲みもせず、歩きつづけたのだった。 |
作品分類 | 小説(短編) |
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