題名 | 情死傍観 | |
読み | ジョウシボウカン | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 松本清張全集 35 或る「小倉日記」伝・短編1■【蔵書No0106】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1972/02/20●初版 | |
価格 | 880 | |
発表雑誌/発表場所 | 「小説公園」 | |
作品表発表 年月日 | 1954年(昭和29年)9月号 | |
コードNo | 19540900-00000000 | |
書き出し | 以前、私はある雑誌に『傍観』と題した二十枚にも足らぬ小品を発表したことがある。阿蘇山の噴火口に投身する自殺者を救う老人のことを小説にしたものだった。この老人は実在の人物で、私が阿蘇の内ノ牧温泉に二,三日遊んだ時、その老人に遭って話をきいた。老人は永年、阿蘇の噴火口の登り口のところで茶店を開いていたが、今まで飛び込み自殺を救った数は百人を下らぬと云う。現に私に、人命救助の知事の表彰状を一束にして見せてくれた。この他、自殺の目的で登山してくる者を、途中で発見して無事に説得して下山させた数を入れたら何百人であろうという。自殺に来る者の様子は、慣れた者には大てい見ていて分かるらしい。大岡昇平氏の「来宮心中」の中にもそんなことが書いてある。自殺や心中の多い土地には、どこにもそんな人間がいるとみえる。 | |
あらすじ&感想 | 阿蘇の噴火口の登り口の所で茶店を開いている老人は、自殺者の救助で表彰を受けるほど 自殺者を救っている。 私は、その老人の話をもとに小説を書く。読者から手紙が届く。 小説家の許に届く手紙が話の中心になった作品はけっこうある。小説の許になった話はこうだ。 過去に自殺者を助けた老人は、ある日、その助けた、あの時の女を目にする。 今度の男は、別の男である。老人は助けた当時を思い出す。 「死なしてくれ、二人で死ぬんだ」と叫ぶ男を横にその女の態度が印象的だった。 泪一滴見せない女を老人は忘れることが出来ない。 女が男に向けた、それは冷たい、憎悪を込めた眼つきだった。 別な男と新婚旅行らしい、その女を見た明日、老人は又自殺願望者を見つける。 そして、助けようとする。 しかし、今度は、老人は、「傍観」する。 小説に書かれた「女」が、「山下キヨ子」である。 老人の「傍観」の原因が女であると感じた女、「山下キヨ子」が、「女が男に向けた、それは冷たい、 憎悪を込めた眼つきだった。」理由を、私に手紙でつづる。 いざとなったら自殺を躊躇する男「有田」。 >「死なしてくれ、二人で死ぬんだ」と興奮して、まるで舞台の上での身振りのような、 >彼の動作を見ると心が白々しました。 >男の卑怯と、利己心と、狡猾と、軽薄とを、今は余すところなく見せつけられました。 >いざとなったら強いのは女。男は「利己心と狡猾と軽薄」で....... >あの日、夫を阿蘇に誘ったのは、一つの告白でもありました。 >私の過去の現場を、夫によく見て貰うためです。 >私自身も再び、あの火口壁の上に立って、自分の亡霊を弔いたかったのです。 と、最後はきれいに終わっている。 自殺が未遂に終わった時の生への執着など、実際の取材で書かれているのだろう、 結末のきれいさ以上に印象に残った。 2003年03月31日 記 |
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作品分類 | 小説(短編) | 10P×1000=10000 |
検索キーワード | 阿蘇・噴火口・茶店・自殺・心中・老人・小説家・憎悪・利己心 |
登場人物 | |
私 | 清張本人なのか? |
老人 | 阿蘇で茶店を開いている |
山下 キヨ子 | 仮名、私に手紙を送る |
有田 | 仮名、山下キヨ子の元恋人 |