題名 | 強き蟻 | |
読み | ツヨキアリ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 松本清張全集 23 喪失の儀礼・強き蟻■【蔵書No0104】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1974/04/20●初版 | |
価格 | 880 | |
発表雑誌/発表場所 | 「文藝春秋」 | |
作品発表 年月日 | 1970年(昭和45年)1月号〜1971年(昭和46年)3月号 | |
コードNo | 19700100-19710300 | |
書き出し | 早春の寒い夕方だった。伊佐子が運転しながら燃料計を見るとEになっていた。まだ大丈夫と思っていたが、うかつだった。あと一キロも走れるかどうか。夫の信弘は後部座席で煙草をくわえている。近ごろますます猫背になった。うすくなった髪に白さが増した。商店街の灯が両側から彼の長い顔に絶えず当たっているが、太い眉毛の下の眼は眠ったように閉じている。バック・ミラーにはその眼のあたりしか映らないが、眼窩が目立って落ちてきていた。ヒーターを入れているのに、寒そうにコートの身体を縮めている。一キロぶんのガソリンだと、夫を会合場所に送りつけて、ちょっと戻りかけるのがやっとだ。会合場所は料理屋で、女中も下足番も玄関に出ている。その連中の眼の届くところで車が動かなくなるのを見せるのは耻だった。外車を乗り回しているのにガソリンを切らしたとあってはみっともない。 | |
作品分類 | 小説(長編) | 186P×1000=186000 |
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