題名A | 火と汐 | |
読み | ヒトシオ | |
原題/改題/副題/備考 | 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集19〕 | |
本の題名 | 火と汐■【蔵書No0211】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | 文庫(文春文庫) | |
初版&購入版.年月日 | 1976/02/25●10版1980/10/01 | |
価格 | 320/古本349=(1+送料340) | |
発表雑誌/発表場所 | 「オール讀物」 | |
作品発表 年月日 | 1967年(昭和42年)11月号 | |
コードNo | 19671100-00000000 | |
書き出し | 一晩泊まった部屋だが、外出先から帰った眼にはわが家の居間のように見えた。ベットのカバーの模様、鏡台兼用の机、小さな丸卓と二つの椅子の位置、京都の風景を木版画にした壁掛けの額、窓に垂れた白い紗のカーテンから透かしてみえる高名な寺院の白壁と石垣。松並木の前に停まっている観光バスの数が減っているのは夕方になったからだ。拝観時間は午後六時までだ。しかし、八月半ばの六時では真昼の光である。美弥子は椅子にもたれて寺の屋根を見ている。炎天の下を歩き回ったあとで、ホテルの冷房が息をつかせた。木陰に入って緑の微風に浸っているときのような、快い怠惰を身体中にひろげているようだった。曽根晋吉は上着を洋服ダンスの中に脱いできて椅子にかけた。煙草をすすめたが、美弥子は微笑をつくっただけで首を振った。大儀そうな動作であった。 | |
作品分類 | 小説(中編) | |
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