題名 | 塗られた本 | |
読み | ヌラレタホン | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 塗られた本■【蔵書No0096】 | |
出版社 | (株)講談社 | |
本のサイズ | 新書(KODANSHANOVELS) | |
初版&購入版.年月日 | 1984/05/01●初版 | |
価格 | 660 | |
発表雑誌/発表場所 | 「婦人倶楽部」 | |
作品発表 年月日 | 1962年(昭和37年)1月号〜1963年(昭和38年)5月号 | |
コードNo | 19620100-19630500 | |
書き出し | 小説家木村丙午郎氏が、「北斗出版社社長紺野美也子」の名刺を取り次がれたのは、うららかに晴れた冬の日のことだった。木村氏は折から新聞社の学芸部員と、一流出版社の編集者と応接間で雑談を交わしているときだった。木村氏は名刺を取り上げて眼を落としたが、その席にいる二人の訪問者にそれを見せた。「君、こういう出版社を知っているかい?」出版社の編集員は名刺を見ていたが、「知りませんね」と次の男に回した。学芸部員はあまり出版社のことに詳しくないので、黙って木村氏に名刺を返した。「どんな人だね?」木村氏は女中に訊ねた。「二十七,八くらいなご婦人ですが、和服を召していらっしゃいます」女中はそのあと何か言いたそうにしていたが、訪問者がいるのでその言葉を呑み込んだようだった。「聞いたことがない出版社だから、どうせ小さいところだろうな」木村氏は合うとも合わないとも言わないで、煙草を口にくわえた。「場所はどこですか?」出版社員が名刺をのぞこうとしたが、あいにくと活字が小さい。木村氏は再び名刺をつまんで「千代田区富士見町となっている」と読んで聞かせた。 | |
作品分類 | 小説(長編) | 231P×770=177870 |
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