松本清張_氷雨

題名 氷雨
読み ヒサメ
原題/改題/副題/備考 【重復】〔(株)文藝春秋=松本清張全集37)〕
本の題名 遠くからの声【蔵書No0007】
出版社 (株)講談社
本のサイズ 文庫(講談社文庫)
初版&購入版.年月日 1976/10/15●2版1976/12/15
価格 260
発表雑誌/発表場所 「小説公園増刊」
作品発表 年月日 1958年(昭和33年)4月号
コードNo 19580400-00000000
書き出し 外は冷たい雨が降っている。渋谷の割烹料理屋「ささ雪」では、玄関の板の間に五六人の女中たちが遊んでいた。灯を入れてかなり経つが、女どもが手ぶらでいるのはまだ客が来ない証拠である。下足番の庄さんは、下駄箱に三人組の履物を一時前にしまったまま、手を組んで外を眺めている。この辺は、飲み屋や喫茶店が多いので、傘をさしたぞろぞろ歩きの客足は絶えないが、こっちに向かう靴音は聞こえない。「今夜は、いやに寂しそうね」みよが袖をすりあわせて云った。「本当ね」加代は火鉢にかざした手首を返して時計を眺め、「もう七時たわ、今ごろ、こんな状態じゃア.....」と天井を眺めた。二階は一部屋だけ客が入っていて、かすかに声がする。いつもは、唄声や廊下をどたばた踏む音がとうに始まっている頃なのだ。玄関の女中たちは、寒そうに肩をすくめ、磨きのかかった板の上に膝をついて、表を窺いながらぼんやりしている。
作品分類 小説(短編) 20P×650=13000
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