| 題名 | 文字のない初登攀 | |
| 読み | モジノナイハツトウハン | |
| 原題／改題／副題／備考 | ||
| 本の題名 | 憎悪の依頼■【蔵書Ｎｏ００６８】 | |
| 出版社 | （株）新潮社 | |
| 本のサイズ | 文庫（新潮文庫） | |
| 初版＆購入版．年月日 | 1982/09/25●初版 | |
| 価格 | 320 | |
| 発表雑誌／発表場所 | 「女性自身」 | |
| 作品発表 年月日 | 1960年（昭和35年）11月16日号 | |
| コードNo | 19601116-00000000 | |
| 書き出し | それは六年間も私にかくされていた。当人だけが知らず、周囲が全部知っている六年間だった。私は何も知らなかった。私は、私を取りまく山の友人がすべて私に好意の眼差しを向けているものとばかり信じていた。彼らの目に特別な感情があったなど夢にも思わなかった。その瞳の中にこめられている、私への疑惑も、侮蔑も、憎しみもいっさい私は気がつかなかった。私だけが何も理解していなかったのだ。私は少しも彼らを疑ってはいなかった。私の記録は、さまざまな山岳雑誌や図書に引用されている。そのことが私をそれに気づかせなかった原因の一つでもある。私の記録が引用されたように、日本中の山の会の人たちが私を信じ、私の初登攀の経歴を尊重してくれていると思っていました。ましてや、「樺の会」は私の仲間で組織されていたのだ。この仲間が私に投げつけられている軽蔑の根源であるとは思ってもみなかった。しかも、それは長い間だったのである。この六年間もそれに気がつかなかった私もうかつであるが、気づかせなかった相手も巧妙といわなければならぬ。 | |
| 作品分類 | 小説（短編） | ３５Ｐ×６８０＝２３８００ |
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