題名 | 大臣の恋 | |
読み | ダイジンノコイ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 憎悪の依頼■【蔵書No0068】 | |
出版社 | (株)新潮社 | |
本のサイズ | 文庫(新潮文庫) | |
初版&購入版.年月日 | 1975/09/05●初版 | |
価格 | 320 | |
発表雑誌/発表場所 | 「週刊朝日別冊」 | |
作品発表 年月日 | 1954年(昭和29年)4月号 | |
コードNo | 19540400-000000000 | |
書き出し | その生涯記念すべき報せを布施英造は築地の高名な料亭で受けとった。折から三人の実業家に席を設けられて客となっていた。懇談というのが招待者の側の理由であったが、格別の話題は出ない。よほど場慣れた年増の鼓でも相槌に詰まるような臆面もない卑猥な話が一座に咲いたに過ぎなかった。このような話を口にするとき、布施英造は笑顔見せなかった。謹直な顔付きをして猥談を語るのが彼のコツのようであった。きき手はそれを察して笑ってやらねばならなかった。殊に今夜の実業家は、敏感に、急所々々に、声を上げて笑う義務があった。その時、襖が開いて女中が手をつかえ、布施に電話がかかっている旨告げた。もとよりこの高名な料亭に室内電話の設備がないわけではない。しかし客を前にしてどのような機密な内容かも分からぬ電話を通じて応答に困らすような無神経をこの料亭はしなかった。余人は知らずこれは日本でも最も有力な政党の領袖である布施英造が自分の位置を考慮して、かねてひいきにしているここの女将に決めた作法であった。 | |
作品分類 | 小説(短編) | 21P×680=14280 |
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