(原題=六月の北海道)
題名 | すずらん | |
読み | スズラン | |
原題/改題/副題/備考 | (原題=六月の北海道) | |
本の題名 | 憎悪の依頼■【蔵書No0068】 | |
出版社 | (株)新潮社 | |
本のサイズ | 文庫(新潮文庫) | |
初版&購入版.年月日 | 1982/09/25●初版 | |
価格 | 320 | |
発表雑誌/発表場所 | 「小説新潮」 | |
作品発表 年月日 | 1965年(昭和40年)11月号 | |
コードNo | 19651100-00000000 | |
書き出し | 六月の半ばであった。秋村平吉は、午後零時すぎに新宿駅にきた。真直ぐに出札口に歩いて、行き先までの切符を買った。窓口の釣り銭を待っていると、うしろから軽く背中をつつかれた。だが、彼は振返らなかった。分かっているからである。釣り銭をゆっくり財布の中に押し込み、切符を上着のポケットに入れてから、はじめて向き直った。ベージュのツーピースを着た、二十七,八くらいの女の微笑がすぐ前にあった。「困るな」秋村は女の前をすぎるときに云った。顔をしかめる表情は、彼がキャンパスに向かって絵の調子を見るときすぼめる目つきと同じだった。「三十分も前から来て待ってたのよ」女は云った。やや肥った感じだが、眼の大きい、派手な顔だった。手にしゃれたスーツケースを提げていた。画家のほうは、野暮ったい普通の旅行鞄だった。「離れていてもらいたいな」秋村はならんで歩きたがっている女に云った。眼をあたりに配っていた。待合室には大勢の客が座っていた。 | |
作品分類 | 小説(短編) | 28P×680=19040 |
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