松本清張_金環食

題名 金環食
読み キンカンショク
原題/改題/副題/備考  
本の題名 憎悪の依頼【蔵書No0068】
出版社 (株)新潮社
本のサイズ 文庫(新潮文庫)
初版&購入版.年月日 1982/09/25●初版
価格 320
発表雑誌/発表場所 「小説中央公論」
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)1月号
コードNo 19610100-00000000
書き出し 石内は、上野の坂を登った。初夏に近い強い陽が、地面に突き刺している。葉の茂った木陰で、人が憩んでいたが、どの人間も疲れたように手脚を投げ出していた。リュックサックや肩掛鞄が、大事そうにそばに置いてあった。ほとんどが食料なのだ。昭和二十三年五月だった。石内は、科学博物館のほうへ歩いた。近ごろ、ようやく、社では自動車を出すようになったが、それでも、今日のような不急の取材のときは、電車でとぼとぼ来るほかなかった。石内が、科学博物館の建物の近くに来たとき、今日の日食報告会の議場になっている、裏側の建物の方に人がぞろぞろ曲がって行くのが見えた。年輩者が多かったが、どの肩にも、弁当を詰めた鞄が下がっていた。石内は辺りを見回したが、他社の者の顔はあまり見当たらなかった。今日の日食報告会が地味な内容なので、他社ではあまり取材欲を唆らなかったらしい。
作品分類 小説(短編) 27P×680=18360
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