研究室_蛇足的研究
2025年02月20日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_164 【黒い樹海】 〔婦人倶楽部〕 1958年(昭和33年)10月〜1960年(昭和35年)6月 |
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姉は十一時すぎに帰ってきた。笠原祥子はアパートの表に自動車の止まる音を耳にし、それから靴音が堅いコンクリートの階段を上がってくるのを聞いて、姉は上機嫌なのだと思った。姉の信子はR新聞社に勤めている。文化部の記者として外を歩きまわっているから、帰りの時間は不規則だった。遅くなると、社の車で送られて戻ることが多い。姉の機嫌のよし悪しは、車のドアを閉める音の高低でもわかったし、次に、こつこつと三階まで響かせる足音の調子でも妹には判断できた。ドアを煽ってはいったときから、姉の顔は少し酔って上気していた。「ただ今。」声が普通より大きかった。「あら、飲んだの?」祥子の目に、姉は笑みかけ、いつもよりは乱暴に靴を脱いで、畳の上に上がった。「お食事は?」「ごめんなさい。すんじゃったわ。」その返事を、姉は後ろ向きになって外出着を脱ぎながら言った。 |
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完全に見落としだと思う。 「黒い樹海」は、全集に収録されていない。 『疑問』のNo09で 『全集に収録された作品と収録されなかった作品』は、何が違うのか? として考察をしていたが、「黒い樹海」は洩れていた。 漏れを発見したので、再調査した。 『全集に収録された作品と収録されなかった作品 (改)』 収録されなかった理由は分からない。蔵書として所有しているは、カッパノベルス(光文社)版だが、 他には、講談社文庫が二種類ある。(旧版と新装版) 同じアパートに住む姉妹。何気ない日常の会話から始まる。なんとなく仲の良い姉妹の感じだ。 姉の信子は、新聞社勤めの文化部の記者。 妹は祥子(ヨシコ・ショウコ?) 姉妹の役回りが分かるような気がする。 「信子」が登場だ! よく出てくる名前だ。 「黒い樹海」は、1958年(昭和33年)〜1960年(昭和35年)に、『婦人倶楽部』に連載された長編小説です。 書籍化されたのは、講談社・光文社(カッパノベルス)・講談社文庫などです。 どうゆう訳か、松本清張全集(文藝春秋)には収録されてません。 他の作品でも言えるのですが、光文社のカッパノベルスで書籍化された ものは、全集で収録されていない作品が多いようです。 何度か、映画化・テレビドラマ化されている。
バス事故で、女を置いて逃げた男の印象が強かった。男の事情というか身勝手さがキーワードになるのだろう。 「黒い樹海」を録画したDVDを探したら、2016年版のDVDが出てきた。 登場人物の笠原祥子は「さっちゃん」と呼ばれていた。「カサハラサチコ」と読むようだ。 蔵書のカッパノベルスの「黒い樹海」には、ルビが振られていて、「サチコ」も確認できた。 蛇足で余談だが、『松本清張生誕100年 「清張を巡る対話」高村薫 佐木隆三 往復書簡』のDVDが出てきた。 テレビ放送されたもので、『或る「小倉日記」伝』がイッセイ尾形の語りで紹介されていた。 作品に登場する「田上耕作」は、実在の人物であるが、「タノウエ」なのか「タガミ」なのか、実在の人物より10歳近く若く設定されて いるようです。(実在の人物は、タノウエと発音) ざぁ〜と再視聴したのですが、なかなか面白かったです。 作中人物の名前を正確に読むことは意外と難しい。 |