研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2005年1月16日

「清張」作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_023

 【なぜ「星図」が開いていたか


研究発表=No 023

【なぜ「星図」が開いていたか】1956年 「週刊新潮」 8月20日号

真昼は灼けるような暑さのつづく七月下旬のある夜、東京都世田谷区△町に住む倉田医師は、看護婦から電話を取り次がれた。......◎蔵書◎遠くからの声/なぜ「星図」が開いていたか●(株)講談社●1976/12/15(2版)より

真昼は灼けるような暑さのつづく七月下旬のある夜、東京都世田谷区△町に住む倉田医師は、看護婦から電話を取り次がれた。「先生、急患でございます」「誰だ?」「×町一ノ四八六番地の藤井といっています」医師は読みかけの本を措いて、急いで頭の中でカルテを繰ったが、そんな名前は無かった。「もしもし、藤井さんと仰言ると?」電話口に出て医師は無愛想に訊いた。「はい。今まで病人ではなかったものですから、先生に診ていただいては居ませんが−−−」相手は澄んだ女の声で、医師の気持ちを忖度した言い方をした。「主人が只今、変でございます。多分、心臓麻痺だと思いますが、倒れたきりでございます。恐れ入りますが、お出で願えましょうか?」医師は腕時計を見た。八時二十四分であった。すぐ行く、と返事して電話を切った。鞄の中に死亡診断書の用紙を入れた。看護婦を乗せたトヨペットを自分で運転して、電話で聞いた地形をたよりに行くと、十分もたたぬうちに、その家を発見した。近所は暗かったが、その家の玄関だけが明るく灯がついていたので、すぐ分かった。

研究

>医師の気持ちを忖度した言い方をした。の「忖度」はなかなか難しい言葉だ。2〜3年前に時事問題で出てきたような気がする言葉だ。倉田医師は開業医なのであろう。八時二十四分は、午後のことだろう。今では救急車を呼ぶのではないだろうか。開業医が、自分の患者でもない病人から、すでに診療時間も過ぎているであろう時間に往診を頼まれて出かけるだろうか。とにかく、死亡診断書を抱えて出かける倉田医師の行動は、事件を予感させる。すでに登場人物は4人(倉田医師・看護婦・電話の女・電話の女の主人)。話の展開としては、往診の依頼を断った場合、清張の小説「霧の旗」的な展開が予想される。しかし、「死亡診断書」の携帯が事件を予感させている。
>「主人が只今、変でございます」は、妙に冷静すぎる。電話の女が怪しい。