松本清張(1122)_球形の荒野

題名 球形の荒野
読み キュウケイノコウヤ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 松本清張全集 6 球形の荒野・死の枝【蔵書No0047】 映画
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1971/10/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「オール讀物」
作品発表 年月日 1960年(昭和35年)1月号〜1961年(昭和36年)12月号
コードNo 19600100-19611200
書き出し 芦村節子は、西の京で電車を下りた。ここに来るのも久し振りだった。ホームから見える薬師寺の三重の塔も懐かしい。塔の下の松林におだやかな秋の陽が落ちている。ホームを出ると、薬師寺までは一本道である。道の横に古道具屋と茶店をかねたような家があり、戸棚の中には古い瓦などを並べていた。節子が八年前に見たときと同じである。昨日、並べた通りの位置に、そのまま置いてあるような店だった。空は曇って、うすら寒い風が吹いていた。が、節子は気持ちが軽くはずんでいた。この道を通るのも、これから行く寺の門も、しばらく振りなのである。夫の亮一とは、京都まで一緒だった。亮一は学会に出るので、その日一日その用事に取られてしまう。旅行に二人で一緒に出るのも何年ぶりかだ。彼女は、夫が学会に出席している間、奈良を歩くのを、東京を発つときからの予定にしていた。薬師寺の門を入って、三重の塔の下に立った。彼女の記憶では、この前来たときは、この塔は解体中であった。そのときは、残念がったものだが、今は立派に全容を顕わしていた。いつも同じだが、今日も、見物人の姿がなかった。普通、奈良を訪れる観光客は、たいていここまでは足を伸ばさないものである。
作品分類 小説(長編) 295P×1000=295000
検索キーワード 中立国・公使館・終戦工作・外交官・武官・米?・芳名帳・唐招提寺・モデル・フランス人・新聞記者・偽名・国威復権会・筒井屋