松本清張_湖畔の人

題名A 湖畔の人
読み コハンノヒト 
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)角川書店=延命の負債(角川文庫)〕
本の題名 松本清張全集 35 或る「小倉日記」伝・短編1【蔵書No0106】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1972/02/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「別冊文藝春秋」38号
作品発表 年月日 1954年(昭和29年)2月
コードNo 19540200-00000000
書き出し 矢上は四十九になった。停年にあと六年である。今の新聞社では十五年勤めてきた。矢上の髪の半分は白髪となった。白と黒とがいりまじって、きたならしい灰色の頭となっている。その、ばさばさに乾いた髪の下に、誰からでも五十を出たと見られる顔の皺があった。矢上の転勤が暮れになって決まった。信州の上諏訪の通信局の主任になるのである。見栄も体裁もなかった。そんなものはとっくに捨てていた。今さら、何を考えよう、心が動けば、どこへでも行くという気持ちだった。転勤をすすめたのは、昔は彼と同輩の男だった。その男の方はそういう人事の出来る地位になっていた。矢上は、それまで社屋でもあまり採光のよくない部屋に座って、見立たない興味のない仕事で一日を送っていた。派手で激しい新聞社の本流から外れて、片隅に押しやられた仕事であった。
作品分類 小説(短編)
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