松本清張(1064)鬼火の町

題名 鬼火の町
読み オニビノマチ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 鬼火の町【蔵書No0006】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1984/10/15●初版
価格 980
発表雑誌/発表場所 「潮」
作品発表 年月日 1965年(昭和40年)8月号〜1966年(昭和41年)12月号
コードNo 19650800-19661200
書き出し 天保十二年五月六日の朝のことである。隅田川の上にあつい霧が白く張っていた。浅草側の待乳山も、向島側の三囲い神社も白い壁の中に塗り潰されたようである。「えれえ霧だ。一寸先も見えねとは、このことだ」と、独り言を呟いた小舟の船頭がある。夜が明けたばかりで、六ツ(午前六時)を少し回っていた。舟は千住のほうから来たのだが、折からの上げ潮にさしかかっているので、水の流れも湖水のように動かない。うっかりすると、方向を間違えて、どこかの岸にぶつかっりそうだった。現在なら汽笛でも鳴らすところだが、当時のことで、鼻唄でも唄うほかはなかった。船頭が警戒したのは、不意に、その厚い霧の中からほかの舟が正面に現れることだった。もっとも、朝が早いのでほかの舟も少ないに違いないが、しかし、一艘でも衝突の危険は同じだった。
作品分類 小説(長編・時代) 282P×600=169200
検索キーワード 天保・水死体・岡っ引き・大奥・銀煙管・屋根職人・大川・徳川幕府・女義太夫.円行寺.片目の男.納所坊主
【帯】久々の長篇時代推理朝霧の大川に浮ぶ無人の釣り舟。漂着した二人の男の水死体。川底に沈んでいた女物煙管はナゾを解く鍵か?反骨の岡っ引藤兵衛にのしかかる圧力の正体は?颯爽の旗本、悪同心、不気味な寺僧、大奥の女たちを配して、江戸を舞台にくりひろげる久々の長篇時代推理!