研究作品 No_175
【けものみち】
〔週刊新潮〕
1962年(昭和37年)1月8日号〜1963年(昭和38年)12月30日号
|
旅館「芳仙閣」は、高台の傾斜を利用して枯山水まがいの庭園を造り、以前からの母屋のほかに新館がある。二月初めのある晩のことだった。芳仙閣の新館の十畳の間が借り切られた。此処を旅館では「深雪」と名づけて、いちばんいい部屋になっている。客は十人ぐらいであった。それも来るときはバラバラに到着した。客の高級な自家用車やハイヤーは、急な坂道を匍って玄関に上がった。宵の口の「深雪」では酒を飲んだり、飯を食べたりして、気軽な宴会が続いているようだった。客はみんな年配の男ばかりで、洋服と和服だったが、いずれも立派なものを着ている。芳仙閣の女中たちは、帳場から小さな同業組合の懇親会だと聞かされていた。しかし、九時ごろになると、女中たちは締め出された。このころになると、若い男たちが、その部屋の前廊下に、何となく立つようになった。十畳の間の隣が八畳だったが、そこに青年たちは休み場所をあてがわれていた。ジャンパーやセーターだけの者が多く、交替で新館と本館とをつなぐ廊下のあたりに立っていた。
|
高台にある旅館は、「芳仙閣」。新館の奥座敷の十畳間が借り切られて宴会が行われていた。
同業組合の集まりらしいが、少々雰囲気が違うようだ。
印象としては、ヤクザの集まりとも感じられる雰囲気が窺える。
場所は都内なのか?それとも地方都市なのか?
見当が付かないが、都内の神楽坂、麹町、赤坂、あたりか、新橋の「金田中」・赤坂「菊乃井」「千代新」・紀尾井町「福田屋」とか
名前は聞いたことがある。
。
「芳仙閣」は、兵庫県の中華料理店として実在するが、この小説とは全く無関係。
不確実な情報ですが、「けものみち」の映像化(NHKTVドラマ)に当たって、撮影場所として、杉並の清張邸が使用されたようです。
(※週刊 松本清張 7『けものみち』で、清張自身が語っていた)
タイトルからして、「芳仙閣」は、けものみちへの入口かもしれない。迷い込んだら最後抜け出せない。
●けものみち

●離れ ●松本邸

●枯山水

|