研究室_蛇足的研究
2025年04月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_167 【死者の網膜犯人像】 (原題:死者の目の犯人像) (シリーズ作品/草の径:第二話■松本清張全集66では、第三話として収録) 〔月刊 文藝春秋〕 1990年(平成02年)5月号 |
はじめ随筆ふうに。江戸川乱歩の随筆集「幻影城」に「類別トリック集成」というのがある。乱歩が博渉した内外の、とくに外国の探偵小説の単行本や雑誌掲載の中から拾い集めたもので、戦前戦後にわたっている。その中に「網膜残像」という項目がある。「死の刹那に見た犯人の顔が、解剖すると網膜に残っていて、犯人推定の手がかりになる。こういう話は昔からあって、よく小説に使われたが、科学的には否定されていたところ、最近は肯定するような研究も発表されるに至った」乱歩が従来は「科学的には否定されていたところ、最近は肯定するような研究も発表されるに至った」と書いているが、どうだろうか。「最近」とは一九五三年頃の欧米をさしている。イプセンの戯曲「小さなエイヨルフ」は、ノルウェイのフィヨールドに面したアルメス家の別荘が舞台である。アルフレッド・アルメスと妻リータの間にはエイヨルフという九歳になる男の子がいる。この子は幼児のときテーブルから下に落ちて片足を傷つけ、いまも歩くのが不自由である。それというのが、両親が抱擁しているちょっとの目油断から幼児がテーブルのうえからフロアに転落したからだ。 |
シリーズ作品「草の径」は、清張最晩年の作品です。 発表時から単行本に収録されるまでに紆余曲折があったように見受けられる。 発表は、「月刊 文藝春秋」で、1990年(平成2年)1月号から始まっている。 1990年(平成2年)1月号=「削除の復元」 1990年(平成2年)4月号=「ネッカー川の影」 1990年(平成2年)5月号=「死者の網膜犯人像」(原題:死者の眼の犯人像) 1990年(平成2年)6月号=「「隠り人」日記妙」 1990年(平成2年)8月号=「モーツアルトの伯楽」 1990年(平成2年)11月号=「呪術の渦巻き文様」(原題:無限の渦巻き文様) 1990年(平成2年)12月号〜1991年(平成3年)1月号=「老公」 1991年(平成3年)2月号=「夜が怖い」 何れも短編であるが、以上の通り順次発表されている。(必ずしも毎月発表された訳では無いようだ) 1991年に文藝春秋社から単行本「草の径」が、出版されている。(私は3版を蔵書/初版は1991年) ![]() 【草の径】第二話『ネッカー川の影』 【草の径】第三話『死者の網膜犯人像』 【草の径】第四話『「隠り人」日記抄』 【草の径】第五話『モーツアルトの伯楽』 【草の径】第六話『呪術の渦巻き文様」 【草の径】第七話『老公』 【草の径】第八話『夜が怕い』 ●全集の第66巻(1996年(平成8年)3月30日/初版) ※「松本清張全集 66 老公 短篇6」では、「削除の復元」は、 シリーズ「草の径」ではなく単独で収録 全集66巻短編6では、「草の径」 収録順番がかなり違っている。 それぞれ出版事情があるのだろうが、「老公」が、草の径の第一話のように編集されていて 「削除の復元」が、単独の短編として編集されている。奇妙に感じられる。 収録内容は 一.【草の径】(siri-zu03) 1.老公(077__02) 2.モーツアルトの伯楽(075__02) 3.死者の網膜犯人像(073__02) 4.ネッカー川の影(072__02) 5.「隠り人」日記抄(074__02) 6.呪術の渦巻文様(076__02) 7.夜が怕い(078__03) 二.「河西電気出張所」(613__03) 三.「山峡の湯村」(046__02) 四.「夏島」(606___02) 五.「式場の微笑」(113__02) 六.「骨壺の風景」(058__02) 七.「不運な名前」(614__02) 八.「疑惑」(004__02) 九.「断崖」(609__02) 十.「思託と元開」(704) 十一.「信号」(607__02) 十二.「老十九年の推歩」(608__02) 十三.「泥炭地」(677__02) 十四.「削除の復元(071) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 原題は、死者の目の犯人像 死者の目が、「死者の網膜眼の...」に替わっているところが面白いし、おどろおどろしい。 「幻影城」は、 >江戸川乱歩による探偵小説評論集。昭和26年(1951)刊行。続編は昭和29年(1954)の刊行。 されたもののようだ。 詳しくは、以下の通り 【幻影城】げんえいじょう 江戸川乱歩の推理小説評論集。正編は1951年(昭和26)、その改訂増補版と続編は54年に刊行。著者の推理小説に対する情熱と実作者としての経験に裏打ちされた該博(がいはく)な知識にあふれ、内外を通じても第一級の評論、研究書といえる。「探偵小説の定義と類別」「探偵作家としてのエドガー・ポー」「怪談入門」「倒叙推理小説」などはとくに力作であり、続編に収められた「類別トリック集成」「英米の短編探偵小説吟味」「探偵小説に描かれた異様な犯罪動機」などは綿密な分析的論文で、この分野のものとしては必読の文献である。本書が戦後日本の推理小説の発展に寄与した功績は大きく、正編は1952年、日本探偵作家クラブ賞(現日本推理作家協会賞)を受賞した。 [厚木 淳]『『江戸川乱歩全集18・19』(1979・講談社)』 書き出しから推測すれば、 >科学的には否定されていたところ、最近は肯定するような研究も発表されるに至った」 >乱歩が従来は「科学的には否定されていたところ、最近は肯定するような研究も発表されるに至った」と書いているが、どうだろうか。 死者の網膜に何か残像のようなものが残っている可能性を材題にしているのでは無いだろうか? 残像を再現できるなど聞いたことも無いし、少々猟奇的な話ではなどと、考えてしまう。 幼児の怪我を事例に話が展開するようだが、「トラウマ」的な話なのだろうか? 舞台は、前作「ネッカー川の影」のドイツから、ノルウェイに移っている。 |