研究室_蛇足的研究
2024年10月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_161 【寒流】 (シリーズ作品/黒い画集:第六話) 〔週刊朝日〕 1959年(昭和34年)6月14日号〜8月30日号 |
B銀行R支店長沖野一郎が、割烹料理屋「みなみ」の女主人前川奈美を知ったのは、沖野一郎が新任支店長として取引先をまわったときが最初であった。つまり「みなみ」は、B銀行のお得意先の一つだったのだ。Rは、東京都内でも活気のある一区画で、都の人口がふくれるにつれて急速に拡大してゆく住宅地を背後に控え、都心からの交通が蝟集し、デパートが競立している。夜の人出の多いことは、銀座を凌ぐものがあった。それで各銀行もことごとくここに支店を置いて激烈な競争をしている。R支店長に転勤してきた沖野一郎は重要なポストに据えられたわけである。沖野一郎には、目下、B銀行で勢力を伸ばしにかかっている重役の推輓がある。桑山英己という四十二歳の常務ある。この若さで常務になっているのは、彼の先代がB銀行創立の功労者で、長い間、頭取をやっていたのである。 |
全集でも六話。 >東京都内でも活気のある一区画で、都の人口がふくれるにつれて急速に拡大してゆく住宅地を背後に控え、 >都心からの交通が蝟集し、デパートが競立している。 >夜の人出の多いことは、銀座を凌ぐものがあった。 >それで各銀行もことごとくここに支店を置いて激烈な競争をしている。 候補地は絞られてくる。渋谷、新宿あたりか? ただ、都心からの交通が「蝟集」するとは、都心では無いと言うことになる。どこだろう。 デパートの競立も混乱させるワードである。 時代背景(昭和30年代)からすると新宿あたりなのだろう 始から舞台装置はハッキリしている。割烹料理屋「みなみ」、銀行のお得意先 登場人物も出揃っているのではと感じさせる。 割烹料理屋の女将:前川奈美 銀行の新任支店長:沖野一郎 銀行の常務42歳:桑山英巳 奈美と沖野一郎は何かありそうな書き出しである。 ●言葉の事典:「蝟集」 《「蝟」はハリネズミの意》ハリネズミの毛のように、一時に1か所に、多くのものが寄り集まること。 |