研究室_蛇足的研究

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2024年08月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_159
失踪
(シリーズ作品/黒い画集:第四話)

昭和二十五年のこと、東京都中野区氷川町××番地に新築間もない家を買い、一人で住んでいた竹下幸子という若い女が、事情があってその家を売ることになり、売買契約が出来て、四月十三日の夜、その買い主といっしょに外出したまま行方不明となった事件が起こった●蔵書【松本清張全集 4】(黒い画集)文藝春秋社●「週刊朝日」1959年(昭和34年)4月26日号〜6月7日号
〔週刊朝日〕
1959年(昭和34年)4月26日号〜6月7日号


昭和二十五年のこと、東京都中野区氷川町××番地に新築間もない家を買い、一人で住んでいた竹下幸子という若い女が、事情があってその家を売ることになり、売買契約が出来て、四月十三日の夜、その買い主といっしょに外出したまま行方不明となった事件が起こった。竹下幸子は二十一歳で、もとデパートの店員をしていたが、大阪のある機械商に見そめられ、勤めを止して、氷川町に新地したばかりの家を買ってもらって愛人となった。その機械商は上京毎に彼女の家に滞在した。そのうち、機械商の熱が冷め、この生活も長続きはせず、幸子は自然に捨てられた恰好になった。手当も絶えて生活に困った彼女は家を売ってそれをもとに洋裁店でも始めようと思い、豊島区千川町××番地に住む両親にも相談した上、不動産売買仲介業者に買い手の斡旋を頼んだ。その後、某繊維会社社長淵田岩男と直接交渉となり、同人に三十五万円で売ることになっていた。
東京都中野区氷川町××番地
1963年頃には氷川町名で存在していたようだが、現在は、東中野1丁目〜4丁目付近らしい。
下の地図で言えば、左側(上下)に走っている道路が山手通り(上が、品川方面。下が池袋方面)
上部に左右に走っている線路が、中央線(左が中野駅方面。右が大久保駅・新宿駅方面)
右側の上下に流れている川が神田川。

   
右の地図の赤色で囲まれた部分が、東中野1丁目付近。
若い女の竹下幸子が新築間もない一軒家を購入している。それを売ることにして、契約が成立しているのだという。
竹下幸子は、大阪の機械商の愛人になり、男の上京の度に滞在場所としてその家は利用されていた。
機械商の男の熱も冷め、捨てられる恰好で関係は破綻した。
生活に困り、家を売り洋裁店でも始めようと計画したのだった。
幸子には、豊島区千川町に両親が居た。
相談の上で、不動産仲介業者に買い手の斡旋を頼んだのだった。
買い手は、繊維会社長渕田岩男。
幸子と長淵田岩男が行方不明になった。
なんとも奇妙な出だしである。
出だしの書き込みとしては、かなり具体的で内容が豊富と言える。でも雲を掴むような感じでもある。

機械商で、すぐに「点と線」の安田辰郎を思い出した。
家の売買価格が三十五万円とは、時代を感じさせる。。