研究作品 No_157
【混声の森】
〔河北新報〕
1967年(昭和42年)8月13日〜1968年(昭和43年)7月18日
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「事故でもあったかな?」石田謙一はタクシーの運転手に声をかけた。「さあ?」運転手も首をかしげている。夜の十時ごろだった。権田原から神宮外苑に入った所で、タクシーが前に詰まってのろのろと進んでいる。向こうのほうで懐中電燈の灯がちらちらしているのは警官でも立っているらしかった。「事故ではなく、事件が起こったのかもしれませんね。検問のようです」運転手は、窓から少し首を伸ばして様子を見たうえで答えた。「酔っ払い運転の検査じゃないのか?」客はいった。「そうではないようですな。酔っ払い運転だと、主に白ナンバーを停めます。タクシーまでいっしょに停めるのは、やはり事件が起こったんでしょうね」車が進むと、運転手の言葉どおり、私服と制服とが六、七人立っている。制服の巡査は少し手前で車を停め、懐中電燈の光を座席に射しこんで客の顔を眺め、問題でないと思われる車はさっさと通していた。
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権田原から神宮外苑へ入ったところ。?
タクシーの進もうとしている方向がハッキリしない。
>権田原から神宮外苑に入った所で...
と書かれているので、四谷方面から赤坂御所の脇を通り、権田原の交差点に向かったものと思えます。(●が権田原交差点)
交差点を突き抜けると外苑の周回道路に入ります。青山通り(国道246号)へ抜ける場合に利用することが多いです。
検問の場所が外苑の周回道路に入ったとこだと考えられます。小説の書かれた当時と少し違うかも知れません?
タクシー内での乗客と運転手の会話から事件の匂いが感じられます。
問題はおそらく、乗客の存在だと想像できます。
清張作品には、タクシーの運転手が関係することも多いので断言は出来ません。
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