研究室_蛇足的研究

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2023年12月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_150
内海の輪
(シリーズ作品/黒の様式:第六話)

旅館の帳場−−近ごろはしゃれてフロントとよんでいるところもあるが、深まった家から門に出るまで庭石の通路の横にそういう関所がある。●蔵書【松本清張全集9】(黒の様式)文藝春秋社●「週刊朝日」1968年(昭和43年)2月16日号〜1968年(昭和43年)10月25日号
〔週刊朝日〕
1968年(昭和43年)2月16日号〜1968年(昭和43年)10月25日号


旅館の帳場−−近ごろはしゃれてフロントとよんでいるところもあるが、深まった家から門に出るまで庭石の通路の横にそういう関所がある。れんじ窓になっていて上半分までは藍染めのノレンが下がり、客からはちょっと見えないようにしているが、そこからは灯が通路までこぼれているし、内側の人間にはもちろん前を出入りする客の顔が分かっているはずだった。客が顔をそむけても、ありがとうございました、と中から女中の声がかかるのである。三ヵ月めくらいにくるのだが、帳場の女がこっちの顔を覚えているのかどうか。、宗三は、その前を通るのがいつも辛い。部屋に来る係の女中は順番らしく、そのたびに違っているのが助かるが、帳場の女は変わらないのだろう。しかし、三ヵ月に一度のことだし、ほかの客も多い中だから印象はうすいようにも思われる。とにかく、この関所を通り抜けて外に出るとほっとする。
※「れんじ窓」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
法隆寺回廊の連子窓
連子窓(れんじまど)は、断面方形又は菱形の細長い木材(連子子)を縦又は横に連ねた連子を嵌め込んだ窓である。
採光、通風、防犯を目的とする。
寺院や神社で用いられることが多く、日本では法隆寺、薬師寺、春日大社、大極殿の回廊等に見られる。
当時は柱は丹(朱)、壁は白、連子窓は青(緑)に塗られることが多かった。
一例として、三十三間堂の東大門は朱塗りと白壁・緑の連子窓が鮮やかな典型的な鎌倉様式で再建された。
茶室では竹格子を嵌めた窓を連子窓と呼ぶ。



「関所」と表現している場所は、帳場らしい。
宗三がが辛いと言っているのは、後ろめたい気持ちがあるのだろうか?
女中は変わっても、帳場の女は変わらない。宗三の気持ちから読み解くと、女連れで旅館に泊まり、顔を覚えられるのが迷惑なのだろう。
旅館と呼ばれるだけに、フロントと呼ばれるが、帳場があり、庭石の通路があるので、連れ込み宿的な場所ではないのだろう。
密会の場所は、何処で、誰と会ったのだろうか?