研究室_蛇足的研究
2023年10月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_149 【弱気の蟲】 (シリーズ作品/黒の様式:第五話) 〔週刊朝日〕 1967年(昭和42年)11月3日号〜1968年(昭和43年)2月9日号 |
川島留吉は或る省の役人をしている。或る課の課長補佐だった。留吉は私大を出るとすぐこの省に入った。友だちは、いかにも彼に似つかわしい職業を得たと思った。勤勉で、律儀で、地道で、いささかのハッタリもない男なのである。学校時代はガリ勉で、いい成績だった。国家公務員の試験成績もよかった。爾来、三十九歳の今日まで二十年近く律儀に役人生活を勤めている。彼の入省は敗戦後まもなくで、世の中が混乱している時だった。大学卒で役人になろうという者はあまりなく、時代の風雲に乗じてヤミ商売をはじめたり、それを発展させて会社をつくったりした者が少なくなかった。就職希望でも、ベース・アップの最も遅い官庁などを志す者はあまりなかったものだ。もっとも、今からふり返ると、風雲組で成功している者はわずかしかいない。彼らの野心のほとんどは失敗し、なかには行方知れない者もいる。 |
主人公は、課長補佐らしい。 「課長補佐」だけで、汚職事件の犠牲者を想像してしまう。 おとなしくて勤勉な男。 >勤勉で、律儀で、地道で、いささかのハッタリもない男なのである。 >爾来、三十九歳の今日まで二十年近く律儀に役人生活を勤めている。 完全に汚職事件のパターンだ! 書き出しは時代の風潮を的確に表現していて、内容もタイトルの「弱気の虫」が予見的に暗示している。 注)原題が「弱気の虫」で解題で「弱気の蟲」になっている。解題の理由が知りたい。 風雲組とは? >時代の風雲に乗じてヤミ商売はじめたり、... の意味のようだが、「風雲組」なる言葉があった訳ではなさそうだ。 ※10月21日に更新しているが、下書きをUPしてしまった。(2023年10月28日/再登録) |