研究室_蛇足的研究
2023年8月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_147 【微笑の儀式】 (シリーズ作品/黒の様式:第三話) 〔週刊朝日〕 1967年(昭和42年)4月28日号〜6月30日号 |
春の終わりから夏の初めに移る季節だった。鳥沢良一郎は、奈良から橿原神宮方面行きの電車に座っていた。車窓に動く午前の明るい陽射しは彼の白髪をきらめかせた。彼は、その陽のぬくもりを肩に愉しみながら本を読んでいた。鳥沢良一郎博士は、ある大学の法医学教授を二年前に退職した。今では別の大学にときどき講義に行く以外、べつに忙しい仕事も持たない。いや、もう一つ、大学の講義以外に、警視庁の科学捜査研究所の嘱託という名で、十日に一回ぐらい、警視庁に話をしに行っているが、これは前に関係の深かった法務関係の人たちから特に頼まれたもので、いわば余生の片手間だった。鳥沢博士は教授のころ、裁判の鑑定をずいぶん頼まれた。彼は血液型の研究が専門で、その方面では世界的な学説を出している。鳥沢理論というのは、現在でも法医学に業績を固定させている。遺伝も彼の専門となっている。鑑定もそうした方面が多いが、もちろん、それだけに限定されたのではない。裁判鑑定はあらゆる分野のものを引き受けなければならなかった。 |
奈良から橿原神社方面行き。なら、近鉄橿原線で1時間程度。 主人公は、鳥沢良一郎で、ある大学の法医学教授を二年前に退職した。べつに忙しい仕事もしていない。 もう一つの顔として、警視庁の科学捜査研究所の嘱託という名で、十日に一回ぐらい、警視庁に話をしに行っている。 血液型の研究が専門で、「鳥沢理論」と呼ばれる論文も出していて、この方面では世界的権威とも言える。 書き出しでは、鳥沢が何処へ、何のために行くのか具体的に書かれていない。 趣味の旅行と言えるが、その事も記述されていない。 |