研究室_蛇足的研究
2023年2月20日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_141 【遺墨】 (シリーズ作品/隠花の飾り:第十一話) 〔小説新潮〕 1979年(昭和54年)3月号 |
神田の某古書店から古本市の目録が出ている。二四〇ページの部厚さで、古書籍のほかに浮世絵などの版画や江戸期いらい現代までの書画も収録され、その一部はアート紙で五〇ページにわたる巻頭の写真版となっていて、豪華なものである。その中に「名家筆蹟」という欄があり、画幅、書幅、草稿、書簡、色紙、短冊の類がある。専門家や書家の筆のほか、政治家、軍人、宗教人、文士、評論家の書いたものが多い、もちろん物故者がほとんどである。競売の目録ではないから各店ごとに値段がついている。この値段と筆者とをくらべて見るのは興味がある。画家や書家は別として、当時権勢ならびなかった政治家の書幅のほとんどは安い値である。軍人の書幅が軒なみ下落しているのは仕方がない。総じて値が高いのはいわゆる文化人の筆蹟だが、これにも微妙な差があって、たとえば生前に高く評価されていた文士のものが案外に値が低かったり、どっちかというとおおかたの批評家などに無視されがちだった不遇な人のに高い値がついているのはいわゆる「棺を蓋て事定まる」(生前の名誉や悪口はアテにならない)を、そのまま値段の数字にあらわしているようで興趣がある。 |
そもそも、「遺墨」の意味が分からない。 意味は、調べると、「故人が書き残した書画。遺芳(いほう)」らしい。「違芳」も?だが 古本市に並べられている、画幅、書幅、草稿、書簡、色紙、短冊の類を値踏みしているようだ。 一.軍人の書幅が軒なみ下落しているのは仕方がない。 二.総じて値が高いのはいわゆる文化人の筆蹟 三.たとえば生前に高く評価されていた文士のものが案外に値が低かったり 四.批評家などに無視されがちだった不遇な人のに高い値がついている 結論として >「棺を蓋て事定まる」(生前の名誉や悪口はアテにならない)を、そのまま値段の数字にあらわしているようで興趣がある。 誰の眼で見たことが書かれているかは全く触れられていない。内容は清張らしい見方と云ってもよいだろう。 古本市の「目録」をめくりながらの感想のようだ。 |