研究室_蛇足的研究
2022年12月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_140 【記念に】 (シリーズ作品/隠花の飾り:第八話) 〔小説新潮〕 1978年(昭和53年)9月号 |
寺内良二は福井滝子のことをそれとなく両親へほのめかした。彼女はある鉄鋼会社の総務部に七年間つとめている。郷里は北陸で、両親は健在である。ただ、年齢が彼より四つ年上である。そこまではまだよかったが、彼女には離婚歴があって、その過去がひっかかって良二は両親と兄に正面きって彼女との結婚希望が言い出せなかった。良二の父は六十八歳で、会社の役員をしている。彼のぼんやりとした話を聞いただけでも不服な顔をした。母親ははじめから不安を見せた。数日後、良二は兄の家に呼ばれた。兄は大学の助教授だった。飯を食いにこいということだったが、ビールを飲みながら訊かれた。「おまえはその女とどの程度交渉があるのか?」十歳年上の兄は小さいときから良二に君臨していた。両親は自分らの口から言えないので、兄に事情の究明を頼んだのである。 |
シリーズ作品【隠花の飾り】第八話 寺内良二と福井滝子は結婚を意識している間柄だった。ただ、彼女は四つ年上で、離婚歴があった。 良二は両親に正面切って結婚の話を言い出せなかったのは、彼女の経歴が気になっているからだ。 「両親へほのめかした...」が、ハッキリと言い出せないでいた。煮え切らない態度の良二の話に両親も不満顔で反対の態度だった。 そんな良二に両親は兄から話をつけてもらうことにした。 10歳年上の兄は、良二に君臨していた。 登場人物の力関係がハッキリしている。 それに、何だかハッキリしない寺内良二。 福井滝子の意向はまだ記述が無い。 両親と兄の考えは決まっている。物語は、良二の決意次第だ。 |