研究室_蛇足的研究
2022年07月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_136 【北の火箭】 (シリーズ作品/隠花の飾り:第三話) 〔小説新潮〕 1978年(昭和53年)4月号 |
一九六八年三月一日の午後三時すぎ、ラオスのビエンチャン空港に旧式な四発のストラトライナー機がカンボジアのプノンペンからきて到着した。煤けた銀色の翼には国際休戦監視委員会の略字ICCの黒文字が大きく付いている。三十六人乗りの小さな胴体は地面に着くと、機首を上にむけて滑り台のように斜めに傾く。ほかに旅客機はなく、空港はひろびろとしたものだった。むこうの端にヤシの木立が横列にならび、高床式の民家の屋根が二、三のぞいていた。空港の片隅にはトンボのような軍用練習機が五つならんでいたが、その一つは損傷していた。兵隊の姿はなかった。ここからも見えるアンナン山脈を越えた向う側では、連日アメリカ空軍のB52爆撃機が爆弾を降らしているというのに、こちらのラオス側は嘘のように静かでのどかであった。 |
シリーズ作品【隠花の飾り】第三話 そもそも「火箭」とは何だろう >1 昔の戦いで火をつけて射た矢。敵の施設や物資に火をつける目的で用いたもの。火矢?(ひや)?。 >2 艦船が信号に用いる火具。 舞台は、ラオスのビエンチャン。 ベトナム戦争当時の話のようだ。時代背景の理解が必須だと思う。 【国際休戦監視委員会(ICC)】 こくさいきゅうせんかんしいいんかい International Control Commission; ICC 休戦を国際的に監視する機関。 1948年5月の国連安全保障理事会決議によって設立されたパレスチナ国連休戦監察機構 UNTSOや 49年4月同様に設立された国連インド=パキスタン軍事監視団 UNMOGIPなどがある。 特に国際休戦監視委員会として知られているのは,54年7月のインドシナ休戦に関するジュネーブ協定の実施を監視するため, インド,カナダ,ポーランドの3国を構成国として設けられた委員会 International Commission for Supervision and Control in Indochinaである (議長国はインド) 。具体的には「ベトナム監視委員会」「ラオス監視委員会」「カンボジア監視委員会」の3つがあり, 「ラオス監視委員会」は 62年のラオスの中立に関するジュネーブ協定の実行をも監視したが,インドシナ全域への戦争の拡大で, 事実上機能は停止した。 73年1月調印発効のパリ協定 (「ベトナム戦争終結と平和回復についての協定」) により, カナダ,ハンガリー,ポーランド,インドネシア4ヵ国による新しいベトナム停戦国際管理監視委員会 ICSCが設けられ, 停戦違反を処理することになったが,75年4月のサイゴン政権の壊滅により,パリ協定そのものが実質的に無効となった。 |