研究室_蛇足的研究

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2022年04月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_133
突風
(シリーズ作品/影の車:第八話)

葉村明子が夫の寿男の浮気に気付いたのは、それがはじまって三月ばかり後だった。寿男はある商事会社の総務部長だが、四十一歳という年齢と、相当な収入と、かなり自由なる交際費とで、浮気を始める条件は揃っている。●蔵書【突風】中央公論新社(文庫(中公文庫)●「婦人公論」1961年(昭和36年)8月号
〔婦人公論〕
1961年(昭和36年)8月号



葉村明子が夫の寿男の浮気に気付いたのは、それがはじまって三月ばかり後だった。寿男はある商事会社の総務部長だが、四十一歳という年齢と、相当な収入と、かなり自由なる交際費とで、浮気を始める条件は揃っている。夫に出張と宴会とが多くなった。時間的にもそれは浮気の一つの素地であった。社用の交際で深夜にかえって来てもおかしくはない。出張の予定が一日遅れても、自然だった。その発見の手懸かりはきわめて平凡なところにあった。たとえば、明子がズボンを始末するとポケットのハンカチが夫のものでなかったり、ワイシャツの衿のところにルージュのあとが付いていたりした。「バーの女だよ」と寿男は明子に云った。「近ごろは、バーの女はサービス過剰でね、おもしろがって客にへばりついてくるんだ」最初はその説明で納得できた。
●発表当時は、シリーズ作品【影の車】第八話だったが、全集では未収録。中央公論新社の文庫(中公文庫)で発売。

葉村明子の夫は、総務部長で金回りも良かった。浮気を始める条件は揃っていた。
明子が浮気を発見したのもありふれた状況だった。
「バーの女だよ」の言い訳に最初は納得できたが、言い訳からして「バーの女」では無いことはあきらかだ。
時間と金のある男が落ちて行くには時間が掛からなかった。それを見破った妻も落ちていくのだろうか?
作品は「婦人公論」に掲載されている。タイトルが「突風」。妻の対応が一筋縄でいかないような予感がする。