研究室_蛇足的研究
2022年02月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_126 【確証】 (シリーズ作品/影の車:第一話) 〔婦人公論〕 1961年(昭和36年)1月号 |
大庭章二は、一年前から、妻の多恵子が不貞を働いているのではないかという疑惑をもっていた。章二は三十四歳。多恵子は二十七歳だった。結婚して六年になる。多恵子は、明るい性格で、賑やかなことが好きである。これは、章二が多少陰気な性格だったから、妻がかえってそうなのかもしれない。章二は、他人がちょっと取りつきにくいくらい重苦しい雰囲気を持っていた。人と逢っても、必要なこと以外は話をしない。自分では他人の話を充分に聞いているつもりだが、相槌もあまり打たないので、対手には気難しそうに見えるのだった。何人かの同僚と話し合っていても、彼だけは気軽に仲間の話の中に入ってゆけなかった。また、好き嫌いが強いほうだから、嫌な奴だと思うと、すぐ、それが顔色に現れる。多恵子の方は、誰にも愛嬌がよかった。それほど美人ではないが、どこか笑い顔に人好きのするようなところがあって、それなりの魅力を持っていた。 |
●発表当時は、シリーズ作品【影の車】第一話だったが、全集収録は第六話で収録。 大庭章二は、妻の不貞に「確証」を持ったのか? 夫婦、それぞれの性格が特徴的に描かれていて、よくあるパターンと言ってしまえばそれまでである。 陰気で、重苦しい雰囲気の夫、陽気で、社交的な妻。古い言い方では、「割れ鍋に綴じ蓋」とか言う。 ただ、使われ方で多少意味合いが違う。 @どんな人にも、ふさわしい配偶者は必ずいる。 A両者は似通った物同士である 大庭章二夫婦は、互いの足らざるを埋め合わせれば良き夫婦で過ごせたのでは無いのだろうか。 結婚して、六年...子供は無さそうで、夫の邪推も考えられるが? 作品の発表雑誌が【婦人公論】であることから、どうしても先読みしてしまう。 |