研究作品 No_111
【ペルシアの測天儀】
(シリーズ作品:死の枝 第七話(原題=十二の紐))
〔小説新潮〕
1967年(昭和42年)8月号
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ある金属製品会社の課長をしている沢田武雄の家に泥棒が入ったのは、二種間くらい前であった。泥棒は留守をたしかめて入った形跡がある。田沢の妻は夕方きまって近くの市場に買い物に行くし、学校から帰った子供は遊びに出かけていない。午後五時から六時くらいの間は、いわばそうした家庭の魔の時刻であった。盗られたものは現金だけだった。これは妻がタンスの引出しの着物の間に挿んでいたもので、五万円ほどの被害額だった。タンスの引出しは下から上に向かって順次開けられていた。刑事の説明によると、これは常習の窃盗犯だそうである。また、妻の帯がタンスの上の引き出しからだらりと陳列品のように畳に垂れ下がっていた。刑事の話によれば、これは泥棒仲間の呪で、帯は体を縛るものだから、それをだらりと垂れ下げておくのは逮捕されないという意味だそうである。馴れた泥棒だとは、妻の着物や洋服などはいっさい手をふれていないことでも分かった。質屋に入れたり古着屋に持って行ったりするものは、どうしても足がつく。 |
はじめに、タイトルの「ペルシアの測天儀」ですが、先入観というか語彙の知識で「ペルシャ」と読んでいました
全ての登録を『ペルシャの測天儀』としていましたが、原題は、「ペルシア」が正解のようです。
2020年11月21日に訂正登録しました。
ペルシア、ペルシャ(ギリシャ語 Περσ?α)は、現在のイランを表すヨーロッパ側の古名である。
漢名は波斯(はし)・波斯国(はしこく)。
波斯と書いてペルシャ、ペルシヤと読ませることもある。イランの主要民族・主要言語の名称でもある。
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泥棒に入られた、田沢武雄は、刑事から聞かされる。
>妻の帯がタンスの上の引き出しからだらりと陳列品のように畳に垂れ下がっていた。
>刑事の話によれば、これは泥棒仲間の呪で、帯は体を縛るものだから、
>それをだらりと垂れ下げておくのは逮捕されないという意味だそうである。
現金以外に手を付けていない手馴れた泥棒らしい。
被害者宅の、田沢武雄の名前は、はっきりしている。主人公は田沢武雄だろう。
常習犯と思われる窃盗犯は、最初の顔見せだけか...
●ペルシア
ペルシア. イラン人の一支族でイラン高原南東部の
ペールス地方にいたが、 アケメネス朝を建国して
イラン全土を支配して以来、イランをペルシアと
称するようになり、その後も民族名、国号として使われた。
1935年に国号はイランに改称
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●測天儀
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