研究室_蛇足的研究

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2020年7月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_104
赤い氷河期
(原題=赤い氷河)

ミュンヘンの南、シュルタンベルグ湖の北寄りにあるベルクの船着場では、日本人の男たちが九人、レストランで他の外国人とともに遊覧船の来るのを待っていた。●蔵書【赤い氷河期(上・下):週刊新潮 1988年(昭和63年)7月7日号〜1989年(平成元年)3月9日号


赤い氷河期
〔週刊新潮〕
1988年(昭和63年)7月7日号〜1989年(平成元年3月9日号)


ミュンヘンの南、シュルタンベルグ湖の北寄りにあるベルクの船着場では、日本人の男たちが九人、レストランで他の外国人とともに遊覧船の来るのを待っていた。小レストランのまわりは、前面に湖がひろがっているほかは深い森林に囲まれていた。桟橋に向かうところに遊覧船の切符売り小屋がぽつんとあって、土産物店ひとつなかった。ベルクの町の中心地は東に一キロ離れたところにある。日本人一行はさきほど近くのベルク城の庭園をのぞいてきたのだった。九月のはじめで、日本より早く秋がくる西ドイツのバイエルン州だが、ここの森はまだ緑であった。湖岸に沿う森林の間には一条の細い小径がついている。小径は奧へたどっていけば水面に建つ朱塗りの十字架が見られる。だがそこまでは六キロの距離と聞いて、平均五十歳の九人は断念した。
上下巻の長編だ。
単行本の腰巻きは、上巻で
>エイズ! 世界を恐怖に陥れたウイルスはヨーロッパ山岳地方にまで侵入し、人類滅亡の歌を密かに唱っていた・・・・・・
下巻は、
>発病を促進させる者は誰か?生き残りを賭け、地下で展開する熾烈な戦い。科学資料を駆使して描く驚愕の最新長篇。

小説のテーマは『エイズ』らしい。
書き出しは、「ミュンヘンの南、シュルタンベルグ湖」付近の情景描写で、日本人客(観光客か?)が九名。
清張得意の情景描写は、無駄がなく淡々と、しかも的確にその場所を描いている。
地名は具体的に書かれているので、謎解きの必要はない。
平均年齢五十歳の男たちは何者なのだろうか?
【帯】(腰巻き)からの想像が手がかりなのだが...

世間は、新型コロナウイルスで大変な状況だ。(感染拡大の第二波か?)
「ペスト」(カミュ)を読んだ。
「赤い氷河期」も今にしてみれば、予言的作品であり、今読むべきタイムリーな小説である。

ウイルス系の感染症(参考:https://kansensho.jp/pc/infections.html)の多さに驚かされる。