作品の冒頭奇妙な?前文がある。
「昭和三十五年六月十八日の朝、私はこの原稿を書いている。どういう意味においてでも、この年の、この月の、この日は、日本人 にとって、忘れることのできない日になるであろう。岸内閣が、この日のうちに総辞職し、この日のうちに国会解散を行わない限りは、 新日米安保条約は、たとえ参議院で決議が行われなくとも、十九日午前零時に、自然承認のかたちで国会を通過してしまうのであ る。五月十九日から現在まで、世論の嵐は、日一日と高まる一方であった。デモに参加する人々の数も、ふえる一方であった。デモ には明らかな行過ぎもあった。警官にも行過ぎがあった。しかし、今はそれを言うまい。問題の核心は、岸首相が世論に、一切耳を 傾けようとしない態度にあるからだ。アイク訪日取止めの決定も、世論に耳を傾けたからではなく、六月十五日の不祥事に押された からであった。岸首相よ、あなたは耳がないのあろうか」(一九六〇年六月『アサヒグラフ』田中慎次郎)
※田中慎次郎
生年月日:1900年7月28日
死没:1993年7月2日 (92歳)
田中 慎次郎は、日本のジャーナリスト。朝日新聞社取締役出版局長、総理府原子力委員会参与、
社団法人日本原子力産業会議参与などを務めた。 Wikipedia
ただ、今日の社会情勢も、似たような感じがする。
岸内閣と安倍内閣の類似性。そして、沖縄県で実施された県民投票の結果に対する安倍首相の態度。
【誠実に耳を傾ける:県民投票の結果は聞き捨てる。土砂投入は止めない。(朝日新聞3月2日夕刊・素粒子)】(2019年3月3日草稿中)。
書き出しの文章からは、この前文の意味するところが分からない。
>人間いくらか孤独の状態になったとき、知らない人間の声でもつい聞いてみたくなるものらしい。
この心理は、理解できるような気もする。
はじめから登場人物がフルネームでご登場だ。加久隆平・福島淳一。
さらに、二名の女性が登場。
亜鉄鋼会長加久隆平の妻と娘。二人は観劇で留守。
加久隆平の肩書きや女中の存在などで、その生活ぶりも想像できる。
【絢爛たる流離】のテーマであるダイヤの行方が、二名の女性の登場ではっきりするか?
電話口の福島淳一は、若々しいが大きな声を出した。とされ、登場人物の年齢構成も
おおよそ見当が付く。
タイトルの「安全率」が機械工学的な専門用語で、東亜鉄鋼会長加久隆平と関連性を勝手に
予見した。
加久隆平は、カグリュウヘイと読む。普通、カクと読むが、わざわざ「カグ」と読ませる意味は...
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