研究室_蛇足的研究

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2019年3月21日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_094

 絢爛たる流離:第九話代筆


研究発表=No 094

絢爛たる流離代筆
 〔婦人公論:1963年(昭和38年)9月号〕

R市P町 土田三郎(四三)の供述 お訊ねによって申し上げます。私は前職は左官でございます。戦争以来、仕事のほうがさっぱりで、終戦後も商売の目安が立たず、仕方がないので輪タクをはじめました。はじめは駅から客を市内に運んでいましたが、いろいろと縄張りがあって、... 【絢爛たる流離:夕日の城】蔵書:松本清張全集 2 眼の壁・絢爛たる流離:婦人公論 1963年(昭和38年)9月号

R市P町
土田三郎(四三)の供述
お訊ねによって申し上げます。私は前職は左官でございます。戦争以来、仕事のほうがさっぱりで、終戦後も商売の目安が立たず、仕方がないので輪タクをはじめました。はじめは駅から客を市内に運んでいましたが、いろいろと縄張りがあって、新しくはじめた者にはうるさく言いますので、とうとう進駐軍の兵隊をキャンプ付近で客待ちするようになりなした。それが今でもつづいているわけでであります。私の家は市内の端なので、この辺はたいそうパンパンが多うございます。私がGIを乗せて連れて行くのは、そのような女のいる家ばかりですから、自然と、そういう部屋貸しをしている商売がどんなに儲かるか、だんだん分かって参りました。 

土田三郎(43歳)は何をしたのだろう?
前職が左官で今は輪タクをしている。
※輪タクとは
   自転車の後部または側面に客席を付設した乗り物。第二次大戦後の一時期流行した。

進駐軍の兵隊相手の輪タクだが、パンパンに部屋を貸している者たちが儲かっていることを知り、
そのことで、結果的に土田三郎の稼ぎを対比させての描写は、土田の起こしたであろう事件が
透けて見える。タイトルの「代筆」が、いかにも不釣り合いだ。
※パンパンとは
   パンパンとは、第二次世界大戦後の混乱期の日本で、主として在日米軍将兵を相手にした
   街頭の私娼(街娼)である。
   「パンパン・ガール」「パン助」「洋パン」ともいう。
   一般にこの言葉が広まったのは戦後のことであるが、日本海軍内では
   戦中から使用されていたともいう。