三カラット純白無垢 ファイネスト・ホワイト。丸ダイヤ。プラチナ一匁台リング。
昭和二十×年三月十五日、同業光輪堂ヨリ買取ル。シカシシテ、コノ宝石ハ昭和十×年麻布市兵衛町××番地谷尾妙子の妹淳子ヨリ買取ルモノヲ、1ヵ月後、青山高樹町大野木保道氏ニ売リタルモノ。余ノ手帳ヲ見レバ、同氏ハ朝ニ赴ク愛娘ノ結婚記念ニ与エタコトニナッテイル。イカナルメグリアワセカ、コノ同ジ品ヲ同業者光輪堂ヨリ見セラレタトキ、余ハ忽チコレヲ言イ値ニテ買取ル決心ヲシタ。
十一月十八日 コレヲ群馬県××町ノ農業平垣富太郎氏ニ売ル。コノ仲介ハ中央区京橋××番地粟島政治経済研究所所長粟島重介氏ニヨル。
(宝石商 鵜飼忠兵衛ノ手記ヨリ)
終戦直後の東京本郷。骨董商を営む父を持つ山辺澄子、二十五歳、会社の事務員。
澄子について、外見的描写が無い。
物資不足で父の古物商は、面白いように儲かっていたらしい。
ダイヤモンドは、どうやら山辺澄子に渡る運命なのか?
羽振りの良い、自称、骨董商の父が手に入れるようだ。
粟島重介と名乗り「粟島政治研究所」なる事務所を持つ男から縁談が持ち込まれる。
粟島という、一度代議士になった男がうさんくさい。
その男の持ち込む「縁談」が怪しい。
話のキーワードは出そろった感がある。
骨董商・政治研究所・縁談・粟島重介
※忽(タチマチ)
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