研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2006年3月23日

「清張」作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_029

 【紙碑


研究発表=No 029

【紙碑】1987年 〔小説新潮〕

A社から「現代日本美術大辞典」が出る。来年の昭和五十一年春という。......◎蔵書◎途上●(松本清張 初文庫化作品集B)(株)双葉社(双葉文庫)●初版2006/02/20より

A社から「現代日本美術大辞典」が出る。来年の昭和五十一年春という。全三巻で、目下編集中という。広子はこの話を唐沢未亡人の手紙で知った。夫の留守にきたその手紙は焼いた。広子は十五年前に死んだ画家、重田正人の妻だった。重田の死は四十六歳、広子が三十六歳のときであった。七年経って勧める人があり、子のいない広子は北野孝平と再婚した。北野は都立高校の教頭だった。広子とは七つ違いである。北野も三年前に妻と死別していた。彼にも子はなかった。北野は広子の前夫が画家なのをもちろん知っている。広子は北野といっしょになる前、彼と話した。−−重田正人さんのお名前、うかつですが、ぼくははじめてうかがいます。ぼくは高校教師で、教科は数学一本槍なので、芸術とか画壇とかはまったく昏いのですが。

研究

一気に登場人物が紹介されている。
唐沢未亡人、広子、重田、北野、である。
唐沢未亡人と言うので亡き夫も関係がありそうだ。当然広子が主人公であろう。
夫の留守中に来た前夫に関係のありそうな手紙を焼いたことで、この話の展開を予測させる。
再婚後の不安定な夫婦関係、前夫のあまり有名でない画家。
それは、高校の教師であった北野も知らなかった(いくら数学一本槍でも)。
そして、画家であった前夫を、引きずっているような広子
「現代日本美術大辞典」は広子にとって何なんだろう。
登場人物の微妙な人間関係は、簡潔な文章で進んでいる。乞うご期待。