研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2004年11月14日

「清張」作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_021

 【一年半待て


研究発表=No 021

【一年半待て】1957年 「別冊週刊朝日」

まず、事件のことから書く。被告は、須村さと子という名で、二十九歳であった。罪名は、夫殺しである。......◎蔵書◎松本清張全集 36 地方紙を買う女・短編2 (株)文藝春秋●1973/02/20●初版より

まず、事件のことから書く。被告は、須村さと子という名で、二十九歳であった。罪名は、夫殺しである。さと子は、戦時中、××女専を出た。卒業するとある会社の社員となった。戦争中はどの会社も男が召集されて不足だったので、代用に女の子を大量に入社させた時期がある。終戦になると、兵隊に行った男たちが、ぼつぼつ帰ってきて、代用の女子社員はだんだん要らなくなった。二年後には、戦時中の雇傭した女たちは、一斉に退社させられた。須村さと子もその一人である。しかし彼女は、その社に居る間に、職場で好きになった男がいたので、直ちに結婚した。それが須村要吉である。彼女より三つ年上だった。彼は中学(旧制)しか出ていないので、女専出のさと子に憧れのようなものをもち、彼より求愛したのであった。この一事でも分かるように、どこか気の弱い青年だった。さと子は、また彼のその心に惹かれた。

研究

いきなり結論から書き始めたようだ。事件は夫殺し。結婚するまでの二人のいきさつ。取り立てて変わった二人ではなさそうである。1957年の作品であり、時代背景も戦後まもなくのようである。殺された夫の「どこか気の弱い青年だった」のと対象は「女専出」のさと子の聡明さである。二人の対比は事件の根本のような気がする。推理小説の醍醐味である、犯人探しは、結論からの書き出しで興味はなくなる。しかし、動機や、殺人の手口など、これからが期待される。