研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2004年08月05日

「清張」作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_020

 【閉鎖


研究発表=No 020

【閉鎖】1962年 「小説中央公論」

突然、お手紙を差上げます。毎日、ご多忙のことと思います。あなたの著書は新聞の広告などでよく拝見しています......◎蔵書◎浮遊昆虫「閉鎖」(文春文庫)(株)文藝春秋 ●1979/7/10(4版)より

突然、お手紙を差上げます。毎日、ご多忙のことと思います。あなたの著書は新聞の広告などでよく拝見しています。大変お忙しいところこういう長い手紙を差上げ、さぞかしご迷惑とは思いますが、もし、お暇ができましたら、ずっと最後まで通してお読みくださるようにお願いします。私の手紙は決して急ぎませんから、そういうお時間ができたときで結構です。私が心理学者であるあなたにこういう手紙を差上げるのは、べつに心理学に興味を持ったからではありません。またあなたの著書を買って読んだこともありません。ときたま、福岡の本屋であなたの本を見つけて、ぱらぱらっと頁をめくったことはありますが、失礼ながら、まあ、そんな程度です。ところが、こういうお手紙を差上げる気になったのは、実は去年の春でしたか、福岡の公会堂で開かれた或る雑誌社主催の文化講演会を聞きに行ったのがきっかけです。

研究

かなり不躾な手紙である。著書は広告で拝見...心理学者に対して、別に心理学に興味を持ったからではありません...著書を買って読んだこともありません...これでもかこれでもかと手紙の主に興味のないことを書き連ねています。しかし、手紙を出したきっかけは、文化講演会を聞きに行ったのがきっかけに手紙を出す気になっている。さて、この講演会はおそらく、手紙を貰った心理学者の「あなた」であろう。講演会が去年の春だから、すでに1年以上の時の経過がある。手紙の差出人の告白的内容が事件を語っているのだろうか?。手紙を出す行為と、その書き出しの内容に違和感が残る。