研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2004年02月01日

清張の作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_017

 【喪失


紹介No 017

【喪失】1956年 「新潮」

男も女も職業をもっていた。田代二郎は運送会社の会計係を勤めて一万五千円を貰う。この月給で妻と子ひとりを養っていた。。......◎蔵書◎青春の彷徨「喪失」(株)光文社 ●1978/12/20(7版)より

男も女も職業をもっていた。田代二郎は運送会社の会計係を勤めて一万五千円を貰う。この月給で妻と子ひとりを養っていた。桑島あさ子は小さな製薬会社の事務員として八千円の給料をとっていた。それで田舎の母のもとに預けてある子供の養育費として千円送り、二千円をアパート代に払い、五千円で生活していた。男は二十八歳の家庭持ち、女は同じ歳で夫を五年前に失っていた。二人の間はあさ子が姉ぶってふるまい、切りつめた金のなかから男の靴下など買ってやり、ふだん粗食しているかわりに男の泊まりにくる夜は牛肉や刺身を彼に食わせた。時には男のせがむままに五百円、六百円の金を与えることもあった。

研究

男は、田代二郎28歳。女は、桑島あさ子。シンプルな書き出しは、この物語の行く末を暗示しているように、具体的である。妻子持ちの男と、訳ありの、子持ちの女。二人の関係の邪魔者は男の妻子であろう。同い年ではあるが、姉ぶってふるまう女の態度、男のせがむままに金を与える関係が平穏で続くはずがない。事件が起こり、犯人は、被害者は、と考えると、基本的な登場人物から大まかな展開が読める。 しかし、清張作品はどう展開するのだろう。