研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2003年02月20日

清張の作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_012

 【流れの中に


紹介No 012

【流れの中に】1961年 「小説中央公論」

笠間宗平は五十二歳になった。勤めている会社は、三十年勤続すると半月の慰労休暇をくれる規定になっている。......◎蔵書◎「憎悪の依頼」新潮文庫●1982年9月25日(初版)より

笠間宗平は五十二歳になった。勤めている会社は、三十年勤続すると半月の慰労休暇をくれる規定になっている。宗平もその資格に達した。会社は休暇に添えて五万円をくれるのだ。たいていの社員は家族を連れてどこか遊びにゆくが、宗平はひとりで旅をするつもりだった。妻は何年ぶりかに温泉地にゆきたがっていたが、宗平はそれを断わった。彼もあと三年経つと定年になる。実は、この旅の計画はずっと以前から考えていて、定年後に行うつもりだったが、それではあまりに侘びしくなる。あと僅か三年でも、やはり働いているうちにその旅をしたかった。

研究

1960年代の作品でなので、当時なら55歳で定年。30年勤続、後3年で定年、大卒ということだろう。旅の目的が書かれていない。ひとり旅を、定年前の、働いているうちにしたいということは?侘びしくなる理由は?。このことが事件の始まりか。事件はすでに起きているのか。登場人物の笠間宗平は、その勤続年数から見ても平凡な勤め人であろう。展開の方向性も見えない。しかし、旅の目的がこの小説の主題であろう。