研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2001年04月06日

清張の作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


今月の研究作品

 【


紹介No 004

【賞】1957年 「新潮」

私が粕谷侃陸という名を知ったのは、随分前からであった。この人の著書は、かなりな古本屋なら殆ど置いている。......◎蔵書◎「延命の負債」角川文庫1987年6月25日(初版)より

私が粕谷侃陸という名を知ったのは、随分前からであった。この人の著書は、かなりな古本屋なら殆ど置いている。私の見る限りでは、たいていは棚の上の方の、天井近いところにならべて埃を浴びていた。手も届かないそんな高いところにある本は、あまり動きそうもない品であろうか、粕谷侃陸の書物がそういう種類の地味なものらしかった。彼の著書は二つあって、一つは千ページ近い厚さで上下からなる「古社寺願文の研究」という戦前出版の大部なものと、一つは戦時中に出した二百ページぐらいの「古社寺蔵の古文書」という小型のものとである。

研究

粕谷侃陸の正体は?私と粕谷侃陸の関係は?書き出しで紹介される粕谷侃陸は、その著書「古社寺願文の研究」でもわかる通り「古社寺願文の研究家」なのだろう。地味な研究家。それは清張作品にたびたび登場する。考古学者などその典型である。彼の行き着く先は「千ページ近い厚さ」から「二百ページぐらい」の変化以上に変わることを予感させる。