紹介No 007
【潜在光景】1971年 「文藝春秋」
登場人物は少ない。わたし「浜島」。20ぶりにバスの中で再会した「小磯泰子」。その子「健一」。
わたしの記憶の中に登場する、父の兄である「伯父」、そして、「母」。
わたし「浜島」が小磯泰子と男女の仲になるまでは清張小説に割合よく出てくるパターンである。
郊外の辺鄙なところにすむ泰子の家に頻繁に出入りするようになる。健一の存在が気になり出す。
誰もが取るであろう行動に出る。健一を手懐けようとする。しかし、健一は、浜島の子供の頃を
思い出させるだけであまり懐かない。浜島の記憶が、父亡き後の母と伯父の仲に及ぶと結末を
想像させられる。それは、まさに健一が浜島をどう見ているかにつながるからだ。
健一の行動は、浜島の「潜在光景」と重なり、次第に恐怖となる。出刃包丁、毒饅頭、鉈は具体的
恐怖として登場する。ついに、6歳の健一が一人の凶器を持った男として浜島を襲う、
そう、浜島は思う
それは、本当に健一が殺意を持って襲ったの不明である。
清張は健一の行為を健一の行動として描いていない。
浜島の「潜在光景」からくる恐怖として描いている。
極限の恐怖から、感情に逆上した浜島は健一の首しめる。殺人未遂で捕らえられる。
彼は取り調べの中で6歳の健一の殺意を証明しなければならない。
その証明は、浜島の「潜在光景」がすべてである。彼は「伯父」を殺したからだ。
殺意を持って、かつて「健一」であった浜島が、今「浜島」である「伯父」を殺した。
殺意の目覚めは何歳くらいだろう。
ある動機を持って人は人を殺そうとするのは何歳くらいなのだろうか?
2002年01月06日 記 |
登場人物
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浜島 |
36歳。「わたし」として登場、妻と2人暮らし。 |
小磯 泰子 |
35歳?。仕事は保険の集金。・夫と死別、6歳の男の子と2人暮らし |
小磯 健一 |
6歳。小磯泰子の子 |
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