今月の紹介作品  【


紹介No 004

【賞】1957年 「新潮」

私が粕谷侃陸と言う名を知ったのは、随分前からであった。この人の著書は、かなりな古本屋なら殆ど置いている。。......◎蔵書◎「延命の負債」角川文庫1987年6月25日(初版)より

私と言う狂言回しの口で語られる「粕谷侃陸」は、誰かモデルでもいるのだろうか。

私と、粕谷侃陸の関わり合いが突然で都合が良すぎる感がある。

若き粕谷侃陸が得た「賞」は、彼の人生を変えてしまう。

本来なら、揚々たる将来が開け、その方面でチョットした存在として権威にでもなれたのであろう。

しかし、時として、若くして得た「賞」は重荷になり、重荷は彼を潰してしまう。

文学賞にも「芥川賞」「直木賞」など、イロイロあるが若くして一発屋的に賞を射止め、

将来を嘱望されながら次なる作品が書けず、そのまま終わる人もいる。

「賞」に頼った生活をする粕谷侃陸は、多少ともその権威の威力を保てる地方都市で

詐欺的行為によって生活の糧を得る。

しかし、その詐欺的行為は、いかにもだまされる方が悪いとでも言いたげな粕谷侃陸の

態度によって「賞」の権威をあざ笑っている。

権威であるはずの「賞」は、その後の彼にとっては復讐の対象なのか。

『ふと粕谷侃陸の大きな「学士院賞受賞」の名刺を思い出した。

しかし、一体、賞の実体とは何であろうか?彼は「賞」へ復讐しているように思えた。』

2001年04月07日 記

登場人物

狂言回し
粕谷 侃陸. 学者?・カスヤカンロク

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