紹介No 003
【ひとり旅】1954年 「別冊文藝春秋」
田部が旅先でみる男女は....
やがて彼は、旅先で彼のそれと同じ眼で女と共に居るところを見られる。
たとえば、電車の中で楽しそうな男女を見る。
しかし、その男女はほんとうに楽しいのだろうか?
その男女を見た眼は、当事者になったとき、初めてその眼を意識する。
楽しそう、幸せそう、それは当人たちの問題と無関係に見る者の眼で決めてしまう。
そのことに気がつくのは容易ではない。
やがて、旅先の涯は女との死が待っている。田部は、初めて気がつく。
女と旅をする田部を見る男の眼は、かつて田部が旅先で男女を見た眼のそれである。
短編で、極めて日常的な状況に潜む狂気をさりげなく書いている。
この狂気も日常なのである。
2001年03月01日 記 |
|
|