松本清張_やさしい地方

題名 やさしい地方
読み ヤサシイチホウ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 失踪の果て【蔵書No0185】
出版社 (株)角川書店
本のサイズ 文庫(角川文庫)
初版&購入版.年月日 1987/10/25●再版1987/11/10
価格 340/古本 170(税5%込み)
発表雑誌/発表場所 「小説新潮」
作品発表 年月日 1963年(昭和38年)12月号
コードNo 19631200-00000000
書き出し 今から十三年前、沼地恭介はある高名なA弁護士の事務所に所属していた。その頃、彼は三十歳だった。今でもそうだが、当時から女房も居ず、酒も呑めなかった。だが、女好きで、事務所もとかく怠けがちだった。彼は目先が利く性質で、カンもよかった。事件の弁護を担当させられると、記録書類を概略見ただけで要点をつかんだ。また奇妙にそこからアナを見つけ、有利な弁護の足がかりにした。その点はほとんど天才的だった。法廷では、胸を張って堂々たる弁論をぶった。大きな声で美辞麗句を連ね、壮麗な論旨を展開した。しかし、このようなやり方をA先生は好まなかった。どちらかというと地味で堅実なA先生は、沼地恭介の方法をハッタリだと批判した。そんなことで、沼地恭介は一緒に働いているほかの同僚よりはぱっとしなかった。しかし、彼は弁護士として将来大成する意志はなかったから、高名な弁護士のもとで冷遇されても、その方面で腐ることはなかった。それよりも彼はもっと派手な世界を眼前に描いていた。
作品分類 小説(短編) 63P×510=32130
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