題名 | 浮遊昆虫 | |
読み | フユウコンチュウ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 浮遊昆虫■【蔵書No0184】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | 文庫(文春文庫) | |
初版&購入版.年月日 | 1976/09/25●4版1979/07/10 | |
価格 | 280/古本 480(税5%込み) | |
発表雑誌/発表場所 | 「別冊文藝春秋」76号 | |
作品発表 年月日 | 1961年(昭和36年)6月号 | |
コードNo | 19610600-00000000 | |
書き出し | 東京の西郊、いわゆる武蔵野台地と呼ばれる一帯は、近年、住宅地がふえてきたが、それでも、東西約四十キロ、南北約二十キロの宏大な地域の大部分は、田園が展がり、欅、櫟、楢、樫などの雑木林が帯状になって幾重にも茂っている。紫女子医大の白堊の建物は、付属高等学校、付属中学校の付帯物を従えてこの地域の一割にすわっていた。紫女子医大の背後には秩父山塊の一部と富士山とが霞み、その裾を北の狭山丘陵と南の多摩丘陵とが両方から甚だ構図的に挟んでいる。段丘は平野の端に起伏し、秩父山塊はもっと遠ざかる。そこで、水田と畑の交錯する平地は雑木林の縞を交えて涯しなく広々と見えるものであった。この付近にも新しい住宅地は発生したが、それはほとんど紫女子医大の前面に限っていた。その背後には見渡すかぎり一軒の家もなかった。多少あっても、それは遠い距離に小さく眺められる程度だった。つまり、その広さだけが紫女子医大の校地であった。 | |
作品分類 | 小説(短編) | 59P×580=34220 |
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