題名 | 穴の中の護符 | |
読み | アナノナカノゴフ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 突風■【蔵書No0037】 | |
出版社 | 中央公論新社 | |
本のサイズ | 文庫(中公文庫) | |
初版&購入版.年月日 | 1974/03/10●28版2002/06/25 | |
価格 | 571+税(5%) | |
発表雑誌/発表場所 | 「小説新潮」 | |
作品発表 年月日 | 1957年(昭和32年)2月号 | |
コードNo | 19570200-00000000 | |
書き出し | その年もあと数日で暮れるという或る日、わたしはかたちばかりの歳暮の品を持って半七老人の家をたずねた。老人はわたしの乗った俥の音を家の中で聞きつけたらしく、自分で格子戸をあけて、にこにこした顔を玄関に見せた。「いよいよ押し詰まりましたね」老人はわたしの差し出した品に、こちらが困るほど丁寧な挨拶をしたのち、ようやく世間話に入ってくれたので、わたしは吻として置かれた茶に手を出した。天気はよいが、薄ら寒い日で、猫が陽の当たる障子の傍で背をまるめていた。「いつぞや入谷の寮の話をしましたね。そら、辰伊勢という吉原の女郎部屋の寮の一件ですよ」老人はわたしの顔を見て言い出した。「ああ、松助の丈賀のような按摩が頭巾をかぶって出てくる忍逢春雪解けのような場面を思い出すと仰言ったお話でしたね」私が言うと、「そうです、そうです、あなたは覚えがいい」と老人はうなずいた。 | |
作品分類 | 小説(短編) | 25P×640=16000 |
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