松本清張_厭戦

題名 厭戦
読み エンセン
原題/改題/副題/備考  
本の題名 松本清張全集 38 皿倉学説・短編4【蔵書No0137】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通) 
初版&購入版.年月日 1974/07/05●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「新日本文学別冊」
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)7月
コードNo 19610700-00000000
書き出し 私の郷里は九州の城下町だが、その近くの山の中に佐平窟という洞穴がある。入口は人ひとりがようやく入り込めるくらいの大きさだが、奥は案外深い。ほかにも同じような穴が藪の斜面についているので、古代の横穴の遺跡だとわかる。その一つの穴だけ、佐平窟という名前がついている。そこは町から約十二キロばかり離れたところで、戦前は、付近が陸軍の射撃場になっていた。火薬倉庫などがあったりして、ふだんからあまり人の行かない場所である。その名前の主は、針尾佐平といって、文禄年間に××家の家来だった人間である。佐平窟は、私が子供のころ、穴の入口に小石などが積まれてあったりして一種の信仰対象になっていたようだ。小石は、ちょうど山のケルンのような恰好で重ねられていた。佐平窟には、一種の陰惨な話と信仰とがついていた。暗い伝承が民間の信仰に結びつくと、たいてい忌まわしい病気が治癒の対象になるようである。
作品分類 小説(短編) 9P×1000=9000
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