松本清張_誤差

題名A 誤差
読み ゴサ
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集37〕
本の題名 駅路 傑作短編集(六)【蔵書No0227】
出版社 (株)新潮社
本のサイズ 文庫(新潮文庫)
初版&購入版.年月日 1965/07/30●36版1982/4/30
価格 400/古本 1円+送料250
発表雑誌/発表場所 「サンデー毎日特別号」
作品発表 年月日 1960年(昭和35年)10月
コードNo 19601000-00000000
書き出し 宿は六軒ぐらいだった。東海道線から私鉄で二時間ばかり山奥に入る湯治場である。地形の不便の故か、それと温泉でなく鉱泉であるためか、都会地からはあまり顧みられなかった。すぐ近くに、仏法僧の生息地としても有名な霊地があり、時たま、そこに参詣した人が帰りがけに立ち寄るくらいのものだった。尤も、晩秋には、このH鉱泉を取り巻く渓谷が紅葉に彩られるので、その見物客が寄って、少し賑わう。滞在している者の半分は自炊の湯治客で、地方の農家から来る者が多かった。宿の二階でも、客が煮炊きの支度をしており、廊下で七輪の下を扇いでいる様子が見られた。この風景は、田舎温泉の特色を現していた。宿の建物はみな古い。六軒の宿のうち、一番大きくてきれいなのは、川田屋であった。ここも自炊客を置かないではなかったが、それは旧館の方で、五、六年前建てた新館は、普通の滞在客を主にしていた。  
作品分類 小説(短編)
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